杖立温泉は、熊本県と大分県の県境を流れる杖立川の渓流沿いにあります。
杖立温泉には新羅出兵から引き上げられた際に産気づかれた神功皇后が産湯に用いたとの伝説があり、こうしてお生まれになったのが後の応神天皇と云われています。
一説によると「杖立温泉」という名は、杖の助けを借りて訪れた人が湯治で健康を取り戻し、帰る時に杖を忘れていったという言い伝えに由来しています。また、弘法大師が残したと云われる「湯に入りて 病なおれば すがりてし 杖立ておいて 帰る緒人」という歌も伝わっています。
杖立温泉では豊富な湯量と高い湯温を利用した「むし湯」が古くから親しまれています。むし湯とは源泉を利用してできた天然の蒸気風呂の事で、空気を暖めて発汗作用を促す一般的な乾式サウナと比べ、循環器にかかる負担が低いと言われています。美肌効果や新陳代謝の改善など様々な効果があります。
杖立温泉は、全国各地で見られる「鯉のぼりまつり」の発祥の地です。杖立川の下流にかかる「もみじ橋」の屋根には、たくさんの「絵馬」ならぬ「絵鯉」がかかっています。絵鯉に願い事を書いてもみじ橋に吊すと願いが叶うと評判になりました。特に「恋(鯉にかけて)」が叶うと言われています。
「背戸屋(せどや)」とは、杖立で昔ながらの細い路地裏のことをいいます。他の地域の路地裏との大きな違いは起伏に富んでいること。このレトロな雰囲気たっぷりの路地には、さまざまなアート作品が飾られており、「ギャラリー背戸屋」とも呼ばれています。杖立の若者達が中心になって結成されたのが「チーム背戸屋」という団体。背戸屋を魅力的にしていこうと精力的に活動しており、「ギャラリー背戸屋」もそのプロジェクトの一環です。
瀬戸内海に面する別府市(大分県)は別名「泉都」とも呼ばれ、源泉数、湧出量ともに日本一を誇っています。また温泉としての歴史も古く、奈良時代の書物である「豊後国風土記」でその存在が確認できます。
別府温泉は「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれる八箇所の温泉郷を中心に湧き出しています。別府八湯は別府(べっぷ)・鉄輪(かんなわ)・明礬(みょうばん)・観海寺(かんかいじ)・亀川(かめがわ)・柴石(しばせき)・堀田(ほりた)・浜脇(はまわき)の温泉郷で構成されており、それぞれ歴史や特徴が異なっています。別府温泉では存在する11の泉質のうち、放射能泉を除く10種類が湧出しており、国内外から多くの観光客が訪れます。
竹瓦温泉の趣のある入り口をくぐって、左側のスペースが人気の砂湯となっています。浴衣に着替えて川砂が敷き詰められた浴槽に寝ころぶと、「砂かけさん」が砂をかけてくれます。肩が隠れるほどすっぽり砂に埋もれたまま約10~20分。心地よい重さと砂独特の温もりを堪能した後は、そのままシャワーで砂を流して上がり湯へ。砂湯、男湯、女湯と同じ温泉施設内でも泉質が違っているのも特徴的です。
別府駅の東口には、足湯ならぬ「手湯」があります。別府観光の父「油屋熊八」像が目印です。手湯では別府温泉の湯がかけ流しになっており、手軽に温泉気分が味わえます。湯だまりを囲うように設置されたモニュメントは、別府の伝統工芸である竹細工の"かご"をイメージしたもの。夜に訪れるとライトアップされた姿を見ることができます。
海岸近くに涌き出していた温泉を楽しむため、地元の漁師が簡素な小屋を建てたのが竹瓦温泉の始まりです。竹瓦温泉という名称はその小屋が竹屋根葺きであったことに由来しています。現在の建物は昭和13年 (1938年)に建てられたもので、平成16年 (2004年)には登録有形文化財に登録されています。男湯、女湯、砂湯と異なる泉質と効能をもつ3種類の源泉を有しており、唐破風の屋根が目を惹く壮麗な外観は、"湯の町"別府のシンボルとして愛されています。
川内高城温泉街の中ほどには維新の英傑「西郷隆盛」が愛好した温泉施設があり、現在は町営の共同浴場となっています。西郷さんはいつも浴槽の隅の方に入っていて、決して堂々と真ん中に入ることはなかったと、彼の人柄を彷彿とさせるエピソードが残っています。この共同浴場は古くから川内高城温泉の元湯と呼ばれており、商店と併設された珍しい温泉となっています。
共同湯の近くには明治に創業した川内高城温泉第1号の湯治宿があります。現在は旅館としての営業はしていませんが、寄り湯として温泉へ入ることはできます。浴槽の壁に"不老泉"の文字があることからもわかるとおり、若返りの湯として有名で飲用しても効果があります。狩りに訪れた西郷隆盛は共同湯に入浴して、こちらの旅館に宿泊していたそうです。路地には「西郷隆盛 宿泊跡」の案内板があり、近くには石碑も建っています。
川内高城温泉は、老舗の旅館やレトロな土産物屋などが軒を連ねる小さな温泉街です。この辺りには昔から良質な竹が多く、温泉街には手作りの竹細工を取り扱う店もあります。また明治維新の立役者、西郷隆盛が逗留したという共同浴場の入り口は雑貨屋となっており、その佇まいは古き良き昭和の時代を思い起こさせます。
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