旧福岡県公会堂は第13回九州沖縄八県連合共進会の開催に際し、会期中の来賓接待所を兼ねて共進会々場東側の現在地に建設されました。
この建物の設計・監督は福岡県土木部技師であった三條栄三郎であり、明治43年3月に竣工、同年4月には閑院宮御夫妻の宿泊所として利用されたほか、共進会開催中は来賓を接待して夜会が催されました。共進会終了後は県の公会堂として一般市民に利用されていましたが、戦後福岡高等裁判所、県立水産高等学校に転用され昭和31年11月以降は福岡県教育庁舎として使用されました。
その後、福岡県庁新庁舎建設、移転に伴って教育委員会も昭和56年11月に移転し、その跡地は都市公園「天神中央公園」の一部となったため、跡地内の諸施設は取り壊されましたが、旧公会堂のうち貴賓館は、数少ない明治時代のフレンチルッネサンスを基調とする木造公共建物として貴重であるため、重要文化財として指定され保存されることになりました。
貴賓館は木造2階建の洋風建築で、北側正面中央に石柱による玄関ポーチを突出させ、北東隅に八角塔を張り出し、また、南側背面には平家の浴室等を附属させ、南東の隅2面にはベランダを回し、外壁は1階窓台から下の腰壁は白い化粧タイルを貼り、1階モルタル壁には目地を入れ、2階窓額縁や軒蛇腹をモルタルで造出しとして外観を石造に擬しています。
屋根は中央に陸屋根を設けた寄棟形として八角塔屋は尖塔となっており、陸屋根を除き天然スレート葺きとなっています。
内部は正面、玄関奥に階段室をとり、その左右に食堂、配膳室、応接室、事務室等の諸室を配し、2階は北東隅に貴賓室を設けるほか、寝室、化粧室、談話室等の諸室を配し、主要室の内装は床が板張り、壁は白漆喰腰板張りとし、天井は木製格縁や木骨下地漆喰塗の格縁で幾何学模様をつくり、各室とも異なった意匠となっています。また、貴賓室等主要室には大理石製の暖炉が設けられ、さらに各所に瀟酒なレリーフや縁どりが設され、貴賓館にふさわしい内装となっています。