なぜか北九州は、映画の舞台になることが多い。古き良き時代を思い起こさせる、風情あふれる情景がいまだ各地に残るからだろう。なかでもレトロ地区として観光客にも人気がある門司港は、監督たちにも人気のようだ。
「この胸いっぱいの愛を」のクランクインは門司港の坂道。門司港アート村や門司の小学校を舞台に心打つ物語が展開されていく。海洋エンタテイメントとして話題をさらった「海猿」には、門司港駅や防波堤が登場する。
北九州市八幡では、今では珍しいまちの小さな映画館「八幡有楽映劇」が、「みなと劇場」という名で「カーテンコール」の舞台となった。映画の上映も実際、ここで行われたいうから、地元の人々にとっては感慨深い。
市川海老蔵のりりしい姿が目に浮かぶ「出口のない海」では、JR九州の小倉工場が活躍した。煉瓦造りの歴史ある建物が映画のシーンを盛り上げる。昭和を描いた「ALWAYS三丁目の夕日」で蒸気機関車が走る鉄橋は、JR九州筑豊本線(愛称:福北ゆたか線)の筑前垣生駅と中間駅の間にある、遠賀川に架かる橋。こちらもJRがらみだが、映画のシーンを彩るには鉄道は欠かせないアイテムに違いない。
さて場所を変えると、大御所・黒澤明監督の名作「乱」の舞台となった、佐賀県唐津市の名護屋城がある。秀吉の命により名君たちが築いた壮大な石垣は、黒澤ワールドにふさわしい。
長崎に移動すれば、作家・村上龍の自伝的小説を映画化した「69(シクスティナイン)」のロケ地が佐世保市に点在する。長崎市ならば、吉永小百合の美しい姿が目に浮かぶ「長崎ぶらぶら節」。長崎もやはり異国情緒にあふれ、「解夏」や「精霊流し」など舞台となった映画は数多い。
熊本といえばやはり阿蘇だろう。前述の「乱」や「黄泉がえり」「男はつらいよ」などなど。あの「ラストサムライ」では、根子岳の険しい山容と中岳の草原が映し出される。「風のダドゥ」では、心に傷を負った少女が、阿蘇で暮らすうち再び生きる力を見いだしていく。大自然の懐に抱かれ、おいしい空気に包まれていると、少女が癒やされた理由を肌で感じる。
九州は、映画の感動をさらに深める風景の宝庫だ。
北九州空港~(40分・バス)小倉~(20分・山陽新幹線)博多
博多~(30分・地下鉄+60分・JR)唐津~(50分・バス)鎮西~(50分・バス)唐津~(50分・JR)伊万里~(25分・松浦鉄道)有田~(30分・JR)佐世保~(90分・JR+10分・西九州新幹線)長崎
長崎~(30分・西九州新幹線)武雄~(26分・JR)佐賀~(20分・JR)鳥栖~(15分・JR+30分・九州新幹線)熊本~ (70分・JR)阿蘇~(60分・JR)大津~(15分・タクシー)熊本空港又は(40分・JR)熊本駅