「尾崎(おさき)人形」を知っていますか?陶器で作られ、コロンとしたフォルムのこの人形は、素朴で愛らしく、心にそっと寄り添ってくれるような温もりがあります。今、再注目されつつある尾崎人形を訪ね、「尾崎人形工房」に行ってきました。
尾崎人形は、伝承によると元寇(弘安の役)の際、捕虜になった蒙古軍の兵士が故郷を偲んで人形を作り、吹き鳴らしたことが始まりといわれています。青、赤、黄の3色が伝統色です。
息を吹き入れると「ホーホー」と素朴な音が鳴る土笛になっていたり、人形の中に玉を入れ、振ると柔らかな音が出る土鈴になっていたり、尾崎人形には子どもが喜ぶ仕掛けがたくさん施されています。現在は40種ほどのバリエーションがあり、全てが手作業で作られているため、一つ一つ微妙に表情や趣が異なり、味わい深いものがあります。
城島さんに作り方を見せてもらいました。材料となるのは粘土。昔は地元の田んぼ付近で採れる、陶器に適した土が使われていました。しかし粘土を採れる田んぼを探すのが難しくなっており、現在は有田の陶土を扱う会社で尾崎の土に近い配合の土を作ってもらい、製作しています。それでは、制作工程を紹介しましょう!
【工程1】石膏型に粘土を詰め、中が空洞になるように中央をくぼませます。左右の空洞の大きさがピタリと合うように作るのにも技術と経験が必要です。
【工程2】両側がきっちりと接着できるよう、接合部にヘラでキズをつけます。キズをつけることで噛み合わせが良くなります。
【工程3】接合部に水をつけた後、右と左、2つの石膏型を合わせギュッと押します。左右がぴったりと合うように。
【工程4】2時間くらい置いたら中の粘土を取り出します。石膏型を外すと、思わず「美味しそう!」と声をあげてしまいます。色・形がまるで人形焼のよう。
【工程5】「バリ」と呼ばれる余分な粘土をヘラでこそげ落とします。こそげ取った後は、手の指で優しく滑らかにならします。
【行程6】押印をします。ググッと、深く押していました。
【工程7】中の空洞部と繋がるように金属製の丸パイプで空気穴を開けます。丸パイプをギュッと差し込みます。
【工程8】吹き口を作ります。吹き口は斜めに作ります。微妙な角度が大切!
【工程9】1週間程度乾燥させます。写真左奥が乾燥前、右手前が乾燥後の状態。
【工程10】800度の窯で6時間ほど焼き上げます。尾崎人形工房では2台の窯を使って焼いています。
【工程11】焼き上がったものに白い下地材を塗り、着色したら完成!
吹く時に口にくわえる部分に着色はしません。真偽のほどは定かではありませんが、「『土のもの(土で作られたもの)』を口につけると虫下しに効果がある」との言い伝えがあり、転じて、子どもの健やかな成長を祈る願掛けの意味があるといいます。
完成品がコチラ!色が滲んだり、はみ出たり、それもご愛嬌。世界に一つだけのとっておきの尾崎人形の完成です。旅の思い出や大切な人へのお土産にいかがですか?
店内には国内外のアーティストとコラボした作品が展示してあります(非売品)。どれもポップでカラフル!尾崎人形の概念を覆す作品も。ぜひ絵付け体験のデザインの参考にしてくださいね
今、尾崎人形は多方面で注目されています。服飾ブランドのBEAMS(ビームス)とのコラボ人形もその一つ。このコラボにより、海外からの顧客からも注目されることに!(BEAMSのインターネットサイトから購入可能)
また、コロナ禍で始まったのは、自宅で楽しめる「絵付けキット」の販売(1430円、税込)です。素焼きの人形と3本の絵筆、5色の絵の具が入っいて、「佐賀一品堂」のサイトで購入可能です。
佐賀一品堂 https://sagaippindou.stores.jp
キットが届いたら、まずは人形を触ってみましょう。少しザラザラした人形の手触りにドキドキするはず。どんなデザインにするか考える時には、きっとワクワクしてしまうはずです。着色する時にはちょっと失敗してクスクス笑ったり、土笛の音色にうっとりしたり。いろんな想いを込めて、誰かにプレゼントするのも素敵ですね。きっとあなたのお家時間を素敵に彩ってくれるはずです。
イベントなどで不在のことがあるため、体験希望の際は電話で予約を。また絵付けの出張教室も行っています(最大30人)。電話番号 0952—53—0091
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