司馬さんの本はどれを読んでも判り易くおもしろい。蘊蓄がちりばめられている。(余談が多いから)
「中津・宇佐のみち」の小編も例外ではない。——世に知られる弓削道鏡、和気清麻呂の神託問題にふれ八幡信仰の歴史に触れる。その奈良時代から一転して現代の宇佐八幡宮の杜を歩く。広い。この神社は拍手は四度、近郊出身の双葉山のことまで話が及び飽きさせない。
ついで、中津の町に読者を誘う。
黒田如水、細川忠興、小笠原、奥平氏と四代にわたる中津藩を「よき混血」と、その文化のミックス度を讃える。かと思うと、パンフレットに今の城の「天守閣を再現した」という文言は誤植であろうと手厳しい。(もともと天守閣はなかった)
福沢諭吉の生い立ちに、彼の思想形成をうかがう。母のエピソードはじめ「人の上に人を作らず、人の下に‥‥」の名言が生まれた背景など詳しく綴り興味深く読む人を引きづりこむ。——
諭吉の旧居の向かいにお寺があるのを見て「門前で子どもの諭吉があそんでいる」のを想像する。(観察は詳しい)諭吉が後年に「演説」の新習慣を興したのはお寺の「説教」の影響と見る。
文庫本を手に旅した方が理解が深まる。
道中、双葉山の記念館もある。
中津から移った細川忠興が築いた小倉城のみならず、清麻呂の故事にちなむ「足立山」を訪れるなど、中津〜小倉を合わせ鏡のように眺めると、歴史のうねりをリアルに感じる。
大分空港~(30分・バス)杵築~(約20分・JR)宇佐市~(15分・バス)宇佐神宮~(約40分・JR)中津市
中津市~(20分・徒歩)中津城~(約30分・JR)中津駅~(約40分・JR)小倉
小倉~(40分・バス)北九州空港