「日本史の古代において肥後はゆうに大和朝廷に対抗しうる一大原始農業国家であった…」司馬さんの言である。さらに薩摩は(豊臣も徳川も太政官政権もお世辞笑いの一つも使わねばならぬ)独立性強い軍事国家であった——と続ける。併せて「肥薩」この言葉の好きな司馬さんは「肥後から山越えで薩摩に入ろう。途中、日本で最も豊かな隠れ里だったといわれる人吉を通って」旅をする。
それが街道をゆく「肥薩のみち」となった。
「文庫本」一冊を持てば充分だ。
ただ、残念なのは、文中描かれている旧蹟やお店などが、時代と共に消滅してしまっていることだ。司馬さんも、あの世から「え!どうして」と憤慨することだろうが…。
いつ頃、誰が、何故に「なくしたのか」の疑問や質問を、あなた自身に問いかけてみることも必要だろう。示唆に富む。
このルートの一部はNo.
13「西南戦争」と重複するので本項では避けたが、ゆとりのある方は是非田原坂から始めるとよい。
ところで、文化や歴史というものは目に見えにくい。見えにくいというよりも見えない。建築物のカタチは見えても解説板が立っていても、その奥の文化は判りにくい。もう一歩突っ込んで知りたい——そんなじれったさが、(司馬さんと一緒に旅をすると)ない。安心して身を任せて旅ができる。
司馬さんと一緒。即ち「街道をゆく」本のことである。
申し訳ないが、解説者はいらない。
田原坂〜熊本城下〜八代〜球磨川をさか上り〜人吉〜久七峠〜大口〜川内〜苗代川(美山)〜鹿児島市〜隼人(蒲生郷)で旅は終っている。
忠実にその跡をなぞれないにしても、重要ポイントを押さえながら二つの県を跨ろう。
いい旅が出来る。
熊本空港~(約70分・バス)八代市~(約5分・JR+約40分・バス)人吉市~(35分・タクシー)久七峠~(25分・タクシー)大口市
大口市(15分・タクシー)~曽木の滝~(約50分・タクシー)新水俣駅~(20分・新幹線)川内駅~(約25分・JR)東市来~(23分・JR)鹿児島
鹿児島市~(60分・バス+12分・九州新幹線)姶良市~(約15分・バス)帖佐駅~(約10分・JR)隼人駅~(20分・バス)鹿児島空港