2024年03月28日

畜産王国九州はもっと強くなる その牽引役に佐賀牛がいる!

子牛を見つめる川添邦宏所長の表情に牛への愛情が伝わる(写真提供:JAからつ佐賀牛いろはファーム)

 国内の食肉需給を支えているのは九州。だから九州は畜産王国と言える。一方で畜産農家の減少があるのも事実。しかし、日本の、九州の和牛のクオリティは世界からも称賛され、未来は明るい。佐賀県では上質な牛を繁殖させると共に就農希望者も学べる施設が開設された。そして佐賀牛の輸出を担う施設もできた。

子牛を育て、繁殖農家を育て 佐賀牛の未来を伸ばすために

出産直後の母牛と子牛を見守る川添さん(写真提供:JAからつ佐賀牛いろはファーム)

 2023年5月、JAからつが唐津市肥前町に「JAからつ佐賀牛いろはファーム」(以後、「いろはファーム」)を開設した。唐津地方は佐賀牛の主要生産地の一つ。いろはファームは伊万里湾に大小の小島が浮かぶ「いろは島」に近い。
 ここでは肥育素牛の生産拡大、繁殖農家支援、担い手の確保・育成を進め、最終的に佐賀牛の生産拡大を図るという。2棟の繁殖牛舎をはじめ、分娩牛舎、哺育牛舎、育成牛舎などを持つ。繁殖雌牛約250頭を種付け・分娩させ、生後9か月まで子牛を飼育。分娩のタイミングを監視カメラで管理し、子牛への哺乳を自動哺乳ロボットでも賄うなど、最新機器を備えているのが自慢だ。

 初代所長を務めるのは川添邦宏さん。JAで佐賀牛の販売普及に従事し、いろはファーム設立に際して子牛の飼育管理を学んだ。オープン前の準備も念入りに行い、牛舎の牛床に使われる鋸くずなどの敷材も専門家と細かくチェックしていったという。この施設の一番の目的は佐賀生まれの子牛の繁殖。「県外から仕入れてきた子牛を佐賀牛に育てるのではなく、佐賀で生まれた生粋の佐賀牛を育てる」という。まずは各地のセリで仕入れた繁殖牛や子牛を育て、ここで生まれる牛たちが「生粋の佐賀牛」となっていく。

開所前の牛舎で専門家と牛床の状態を確認する川添さん(左)(写真提供:JAからつ佐賀牛いろはファーム)

 飼育した子牛は佐賀県中央家畜市場の子牛セリへ出荷。高能力繁殖雌牛を保有し、優秀な血統の受精卵を採卵及び移植も行う。地元の繁殖農家から母牛を受託管理する等、159戸が加入するからつ和牛改良組合の農家を支援するという。さらに就農希望者らの育成機関としての機能も併せ持つ。高齢化による離農が課題となる中、新たな畜産農家を育てるため、2年間で牛の管理や繁殖経営などを実地的に指導。繁殖農家としての、まさに「いろは」が習得できるという。

多久市のJAさが畜産センターでの子牛セリの様子(写真提供:JAからつ佐賀牛いろはファーム)

佐賀牛の海外輸出を担う 高性能食肉センター開設

佐賀県高性能食肉センターKAKEHASHIの外観(写真提供:佐賀県畜産課)

 いろはファーム開設の翌月、2023年6月には佐賀県多久市の「佐賀県高性能食肉センター KAKEHASHI(かけはし)」の牛処理施設が稼働を開始。従来、県外で行われていた輸出向け和牛の処理を県内で行うことで、佐賀牛の輸出量を増やす狙いがある。鉄骨造り2階建てで、輸出先国の基準を踏まえ、血液による交差汚染を防ぐ可動式のと体受け台や給水設備・冷房を完備した係留所が特徴のひとつだ。と畜能力は1日当たり50頭。現在はアメリカ輸出の認定を受けたばかりで、今後、佐賀生まれ、佐賀育ちの佐賀牛を佐賀から世界へ届けていくという。