2024年03月31日

筑豊のソウルフード・ホルモン、そのパワーの真髄

明治から昭和中期まで国内有数の産炭地として日本の発展を支え続けた筑豊地方。そこで働く人々のパワーの源となったのがホルモン料理だ。今ではホルモンに含まれるコラーゲンの美容効果も注目され、地元の人たちの心の味としてだけでなく、幅広く愛され続けている。安くて美味くて、キレイになれる。筑豊ホルモンの魅力とは?

筑豊炭田の労働者たちを支えたホルモン料理

田川市石炭・歴史博物館の二本煙突※写真提供:福岡県観光連盟
旧伊藤伝右衛門邸※写真提供:福岡県観光連盟

筑豊地方は明治以降、日本を代表する産炭地として発展し筑豊炭田と呼ばれた。最盛期には250を超える大小様々な炭鉱があり、そこには全国各地から多くの労働者が集まった。当時の炭鉱労働は重労働で、体力回復のためのタンパク源として炭鉱労働者たちが好んで食べたのがホルモン料理だった。当時は効果で贅沢品とされた牛肉、豚肉に比べ、それらの内臓であるホルモンは安価で手に入りやすく、しかも栄養豊富。その美味しさは労働者だけでなく一般家庭にも広まり、今では筑豊地方を代表するソウルフードとなっている。

今や全国的な知名度を持つ田川ホルモン鍋

濃厚な味に箸が止まらない、とんちゃんこと田川ホルモン鍋

筑豊地方のホルモン料理の中でも、B-1グランプリなどで全国的に知られるようになったのが、地元ではとんちゃんの名で親しまれている「田川ホルモン鍋」だろう。中央がくぼんだ浅い鍋でタレに漬け込んだホルモンを炒め、その上に豆腐とキャベツやニラ、もやしなどの野菜をたっぷりと載せる。野菜がしんなりとしてきたら完成だ。博多のもつ鍋のようにスープで煮るのではなく、野菜から出る水分とタレで煮焼きするのでとにかく濃厚。ホルモンや野菜の甘み、旨みにビールも進む。かつては鍋の代用としてセメント袋を使って調理していたこともあるといい、この独特の形状の鍋はそれを再現したものといわれている。
田川市内の焼肉屋などで食べられるのはもちろんだが、元々は家庭料理なだけに食卓での再現も簡単。鍋はフライパンやホットプレート、タレは市販の焼き肉のタレでも代用可能だ。タレとホルモンがセットになった商品を取り寄せることもできる。

飯塚で誕生したホルモン料理「ほるホル丼」

三拍子の「ほるホル丼」

田川市のお隣、飯塚市でもホルモンは家庭料理として根付いている。その飯塚市で開発されたホルモン料理が「ほるホル丼」だ。飯塚伝説ホルモン促進会が、飯塚の“飯”にちなんでホルモンとご飯を合わせた料理として作ったメニューの1つで、飯塚市内の居酒屋「三拍子」で味わうことができる。一見すると、ご飯の上にサラダが載ったヘルシーな丼。しかし、ご飯を掘っていくと中からプリプリのホルモンがどんどん出てくる。石炭を掘るイメージでホルモンを掘るから「ほるホル丼」というわけだ。このほかにもホルモン料理をはじめとした多彩なメニューが揃っているので、飯塚を訪れた際はぜひ足を運んでみよう。