2023年12月01日

鴨推しでまちづくり! 古くから鴨肉との縁が深い福岡県小郡市

有馬藩の御用猟場があり鴨猟も盛んだった小郡市 将軍にも献上されていた小郡市の鴨の歴史

福岡県の中央部、九州最大級の筑紫平野の北部に位置する小郡市。市の中央を流れる宝満川を挟んで七夕神社(正式名称:媛社神社)と牽牛社があり、古くから棚機の信仰もあることから「七夕の里」と称している。実はこの小郡市、鴨推しのまちでもあることをご存知だろうか。古くから鴨の飛来地であり、鴨との結びつきが強いことから、官民連携による「鴨のまちづくり」を行なっている。

鴨のまちプロジェクトとは?

「鴨のまちプロジェクト」は、2022年の市制施行50周年を機に官民連携で発足。古くから小郡市に根付いている「鴨」を活かし、食文化の継承や新たな特産品開発に乗り出すことで町の活性化を目指す。昔とくらべると鴨の飛来数も鴨猟師も減り、天然鴨も希少で高価となった今、小郡の鴨の価値を再認識し、町の魅力として発信する。地元の飲食店が鴨料理のアイディアや味を競う「鴨まちコンテスト」などイベントも開催。

1935年ごろに撮影された井の浦ため池に飛来したおびただしい数の鴨。地元の小学校には1927年12月には20万羽が飛来したとの記録が残る(写真提供:小郡市教育委員会)

秋の彼岸を過ぎた頃、田園風景が広がる小郡市には鴨が越冬のために渡ってくる。市の西北部・三国地区にはかつて久留米藩の御用猟場があり、毎年500〜700羽前後の「御用鴨」が上納されていた。また、寛政元年(1789年)の「久留米領御答書」には、第11代将軍・徳川家斉へ鴨肉を塩漬けにして献上した記述もある。
 また、小郡市は昔から農業が盛んで、農業用水として多くのため池がつくられていた。この環境が鴨たちにマッチしたようで、越冬の地として定着。1935年ごろに撮影された井ノ浦ため池には、過密状態の鴨が写っている。三国地区は高度経済成長期に大規模な住宅開発が進み、一時期は鴨の飛来数が激減したが、最近また徐々に戻ってきているそうだ。

江戸時代から続く伝統の「無双網猟」

  小郡市では江戸時代から続く伝統の野鳥猟法「無双網猟」が今も行われている。約14mの横長の網を使う猟はため池や深田などに設置。餌を撒いて鴨をおびき寄せ、集まったタイミングで手綱をひっぱると、鴨に網が覆い被さるという仕掛け。この古典的な猟法は今も地元の鴨猟師によって守られている。「無双網猟」で捕獲された天然鴨は肉を傷つけることがないため臭みがなく、上質で深いコクが味わえるという。獲れたて新鮮な鴨肉は刺身で食べても大層旨いと評判。ぜひ一度相伴に預かりたいものだ。

文化庁の「100年フード」に認定 継承していきたい小郡市の鴨食文化

鴨狩猟が盛んだった昭和40年代ごろまでは、小郡の一般家庭でよく鴨は食べられていた。写真は天然鴨のタレ焼き

 久留米藩御用猟場で獲れた鴨は「其味の美なること、諸州の産に優れり」(『筑後誌』)と記されているほど味に良さには定評があった。地元では、鴨猟が盛んだった昭和40年代ごろまで甘辛い醤油に漬けたタレ焼きや鴨ご飯といった料理が食卓を彩っていた。鴨が身近にあった小郡の食の歴史は2022年、文化庁の「100年フード」に認定。伝統の100年フード部門〜江戸時代から続く郷土の料理〜に、「小郡の鴨を取り巻く食文化」として紹介されている。

伝統猟で捕獲された天然鴨を味わうなら 国登録有形文化財の鴨料理専門店「さとう別荘」

 11月15日、野鳥猟が解禁となる日からはじまる伝統の「無双網猟」。この猟で仕留めた天然鴨を使った料理が味わえるのが小郡市きっての名店「さとう別荘」だ。シーズンを迎えると、「鴨のフルコース」「鴨の狩場焼きコース」「鴨鍋コース」などを提供。鴨の刺身や鴨ご飯などもコースに含まれる。建物は大正末期に豪商の邸宅として建てられたもので、門や玄関棟、広間棟が国の有形文化財に登録されている。中庭の景観も素晴らしい屋敷で、野趣あふれる鴨料理に舌鼓。このためにわざわざ遠方から足を運ぶ客が多いというのも頷ける。
※鴨料理を提供するのは11月中旬から3月中旬まで。尚、旬の食材をふんだんに使った「季節の会席料理」は年間を通して味わえる。

鴨料理のメニューは「鴨フルコース(写真)」、「鴨の狩場焼きコース」「鴨鍋コース」の3種。完全予約制なので、必ず事前に電話連絡を。

かも料理・季節料理 料亭 さとう別荘

福岡県小郡市小郡1281

TEL.0942-72-3057

営業時間 12:00〜15:00、17:00〜22:00

不定休

市内飲食店のオリジナル鴨料理を食べくらべ! 第2回鴨まちコンテストも大盛況

小郡市では2022年秋から地元の飲食店がオリジナルの鴨料理を競う「鴨まちコンテスト」を開催。このイベントは地元の飲食店が考案したオリジナルの合鴨料理を食べくらべ、上位3位を決めるというもの。参加者は事前に3店舗分の鴨料理(ドリンク付き)が味わえるチケット(前売2,700円)を購入。気に入ったお店の1位〜3位を決めて投票する。2023年11月8日〜10日には第2回大会が実施され、22店舗が参加。それぞれジャンルの異なる飲食店が用意したメニューは、鴨ロースト、串焼き、蒲焼き重など多種多彩。まず、どれを食べるか選ぶのが大変だが、それで苦労するのも楽しみのひとつ。生ビールやグラスワインなど各店によってドリンクも選べ、酒と鴨料理のマリアージュが楽しめるのもうれしい。鴨肉好きにはたまらないイベント。ぜひ来年も開催してほしい。

鴨のまちプロジェクト実行委員会事務局
〒838-0198 福岡県小郡市小郡255-1(小郡市 商工観光課)
TEL.0942-72-2111

小郡市商工会マスコットキャラクター「かもんちゃん」
「かもんちゃん」をモチーフにした商品も開発中。写真はオリジナルブレンドコーヒー「かもの散歩道」