2024年03月28日
「だぶ」「骨かじり」「パスティー」って!? 九州の肉を使った「何これ!?」郷土料理
地域の歴史や食文化を象徴する郷土料理。そこで暮らす人にとっては母の手料理に匹敵するほど馴染み深い味、他所に暮らすものにとってはその土地まで足を運ばなければ味わうことのできないレアな料理。お肉王国九州は、肉を使った郷土料理が豊富だ。福岡の「水炊き」に鹿児島の「豚骨」、大分の「鳥天」に熊本の「馬刺し」などなど。今回はそんな超メジャー料理ではなく、名前を聞いても想像しづらい「何それ!?」な九州の郷土料理を紹介しよう。
「ざぶざぶつくる」「だぶだぶある」から「だぶ」
鶏肉と季節の野菜を入れて作る郷土料理。この名の由来は「汁がだぶだぶある」や「水を入れてざぶざぶ作る」ことから、なまって「だぶ」と呼ばれるようになったと伝わる。煮崩れしやすい食材は使わずに、大根・人参・ごぼうなど根菜類と厚揚げ、鶏肉などを1cm角程度に切りそろえ、塩と醤油で味付ける。佐賀県唐津市の旧浜玉町、七山村、福岡県宗像地区ではお祝や憂いの際、集落の人々が集まって作った。具材やその切り方は慶弔時で異なり、地域によっても異なるというが、祝い事は「四角」、仏事は「三角」に切る風習もある。宗像地区の小中学校では給食に頻繁に登場する献立でもある。
「すねかじり」は子どもの特権?じゃあ「骨かじり」は?
猪もしくは豚の骨付き肉を大鍋に入れ、アクや脂をすくいながら3時間ほどじっくりと煮こむ。味つけは塩のみだが、昆布や醤油、味噌を加える、生姜などの香味野菜を入れる、球磨焼酎で香り付けするなど家庭にもよる。時間は掛かるが煮こんだ肉はホロホロと柔らかく、ジューシーで旨味もたっぷり。素手で持って豪快にかぶりつき、骨の髄まで吸いつくすまで楽しむので「骨かじり」という名がついた。人吉・球磨地域の特に奥球磨(上球磨/湯前町、多良木町、水上村)地域の郷土料理で、主に宴会など人が大勢集まるときに供される。
お座敷に「引き通し」ておもてなし
かつて壱岐島の農家では、庭先で鶏を飼っている家がほとんどだった。盆・正月・祭りの日に客が訪れると、その時期に採れる野菜と鶏を煮込んでごちそうをつくり、奥の座敷に「引き通し」てもてなしていた。客を奥へ引き入れることが料理名の由来。壱岐の方言では「ふるまう」を「フレメー」というため「フレメー料理」と呼ぶこともある。「ひきとおし」は仕上げにそうめんを加えるのが特徴。鶏肉とごぼうを炒め、昆布ダシ、酒を加えて煮たら醤油と砂糖で味付けし、人参・白菜・こんにゃくなどを加える。最後に固く茹でたそうめんとネギを入れたら完成。壱岐では学校給食のメニューのひとつ。
さすが長崎!和華欄(わからん)文化の国の料理は名前もハイカラ
鎖国時代に出島に出入りしていたオランダ人から伝わったとされる「パスティー」。響きもモダンな料理名はポルトガル語でパイを意味する「Pastel」あるいは生地を意味する「Pasta」のいずれかに由来するといわれている。パイ生地の下は鶏ガラスープ(またはフカヒレスープかスッポンスープ)と、そのスープで煮込んだ鶏肉や人参、長芋、しいたけなどの具材が入っている。スープは中華、味付けは醤油や酒など和風、見た目は洋風。日本の「和」、中国の「華」、オランダの「蘭」が交わった長崎独自の和華欄(わからん)文化を象徴する料理のひとつだ。一部の料亭では卓袱料理(しっぽくりょうり)のなかの一皿として提供。また、出島のレストランの名物料理でもある。
はい、素材は見たままです。でも葉っぱにも見えるんです
見た目のインパクトでは優勝と言っていいかもしれない日田市の名物。鶏の足を醤油ベースのタレで甘辛く煮た「もみじ」は、足先が楓の葉に似ていることからその名がついた。どう見ても鶏の足にしか見えないが、見た目に怖気付いてはいけない。パリッとした皮とトロリとしたゼラチン質の身は、一度食べたら病みつきになる美味しさ。鶏皮のタレ焼きが好きな人は、まず間違いなく好きな味。地元ではおやつや酒の肴によく食されているそうで、スーパーや精肉店などで購入できる。写真は日田市豆田町の唐揚げ専門店「鳥市」のもみじ
以上、興味のある方、食べて見たい方は、ぜひ現地で味わってみてください。