2024年03月29日

金の卵が金賞受賞!市来農芸高校の 「金の桜黒豚」は未来を照らす!

鹿児島県の西部に位置し、東シナ海に面したいちき串木野市。かつて薩摩街道出水筋の宿場町として繁栄し、遠洋まぐろ漁業でも知られる港町だ。思わず噛んじゃう市の名前ランキング堂々1位に輝いたこともあるこの地に、なんと高校生が素晴らしい栄冠をもたらした。鹿児島県立市来農芸高等学校の生徒たちが育てた「金の桜黒豚」が「ESSEふるさとグランプリ2023」で金賞を受賞したのだ。

全国37自治体・53品がエントリー 優れたふるさと納税 返礼品を選出するコンテストの肉部門でみごと金賞を獲得

「金の桜黒豚」の黒豚バラ・しゃぶしゃぶ用(画像提供:エーエフ企画)

「ESSEふるさとグランプリ2023」は、生活情報紙「ESSE」(扶桑社)が主催するふるさと納税返礼品コンテスト。読者インフルエンサーが、地域ならではの特徴や美味しさ、生産者のこだわり、寄付金の使い道などを評価して「肉」「菓子」「酒」など7部門の日本一をそれぞれ決定する。2023年度は全国から過去最高の37自治体・53品がエントリー。市来農芸高校の「金の桜黒豚」は肉部門でみごと金賞を受賞。選考理由には「美味しい」以外に「取り組みが素晴らしい」「学校での学びが将来に繋がるのがいい」「高校生が育てた黒豚に興味を持った」などの意見が寄せられた。最高位獲得には、それにふさわしい物語が背景にあったのだ。

鹿児島黒豚の生産に大きく貢献してきた農業高校 養豚の知識も飼育レベルも高いのに生徒たちは…?

市来農芸高校は、農業科・畜産科・環境園芸科で構成される農業高校。畜産科では学習の教材として黒豚を飼育している。2012年度には優秀な種豚を生み出しているとして、鹿児島県黒豚指定種豚場に認定。過去5年で約120頭の種豚が県内養豚場で活躍し、その種豚からは概算で約3万3,700頭の黒豚が生産されている。また、生徒たちが飼育した黒豚は年間約150頭を出荷。市来農芸高校は鹿児島県が誇る特産品・黒豚の生産に大きく貢献しているのだ。
生き物が相手の養豚の仕事は重労働である。清掃、飼料の配合、餌やり、体調管理、発情期の見極めから子豚の去勢まで。作業自体は畜産会社や農場の大人の生産者が行っていることとほとんど変わらない。生徒たちはここで養豚の基礎知識を得て、非常に高いレベルの飼育経験を積む。しかし、当の本人たちにその自覚はなく、先生には自己肯定感が低いように見えていた。今から7年ほど前の当時、生徒が育てた黒豚は市場でひとくくりに「鹿児島黒豚」として扱われていたため、市来農芸高校の黒豚が世に出ていることはほとんど知られていなかった。

飼育は清潔な豚舎で行われ、飼料も乳酸菌を配合するなどこだわっている

高校生が育てた黒豚をブランドにしよう! 産学官連携の「黒豚プロジェクト」が始動!

「市来農芸高校の黒豚のことを世間にもっと知ってもらえば、生徒たちの自信につながるのではないか」先生の想いは生徒にも伝わり、市内飲食店やフードコーディネーター、市までも巻き込んで、一大プロジェクトに発展。2017年「羽ばたけ、金の卵たち!市来農芸高校黒豚プロジェクト」と銘打ち、市来農芸高校の黒豚ブランド化計画が立ち上がった。養豚については詳しい生徒たちだが出荷後についての知識はほぼ皆無。そのため、ブランドづくりに必要な差別化や販売戦略、PRの仕方などについて1つひとつ学んでいった。

きれいな桜色で出荷頭数が少なく希少価値が高い! 市来農芸高校の黒豚ブランドここに爆誕!

ブランド化にあたり、生徒たちは黒豚にどんな価値があるかを徹底的に話し合った。また、黒豚をもっと深く知るために、他国産豚肉や外国産豚肉と食べ比べてみたり、飲食店でトンカツにして提供してみたりと奮闘。結果、自分たちのこだわりこそが他と差別化する価値になると判断。日々の世話を通してこだわっていることを各自発表するなどして「市来農芸高校の黒豚こだわり5か条」にまとめた。

これらをアピールするために、ブランド名とブランドロゴの制作にも着手。納得するまで話し合い、想いのこもったネーミングとロゴデザインが決定した。

ブランド名とロゴマークには生徒たちの熱い想いが込められている

肉は脂がしつこくなく、旨味たっぷり!希少価値が高い 「金の桜黒豚」は地元企業が加工して商品化

黒豚の重さを一定にするために、一般の黒豚より肥育期間を少し長くしている「金の桜黒豚」。飼料にはサツマイモの量を増やし、乳酸菌も加えるなど肉質向上に努めている。そのため、脂身は甘く味もしっかりしているのにしつこくなく、赤身にも旨味がつまって歯切れがいいのが特徴だ。学習の教材として飼育されているため、出荷数は年間約150頭と決して多くはないが、その分希少価値が高いといえる。「黒豚プロジェクト」の立ち上げから参加するエーエフ企画(いちき串木野市八房)では、「金の桜黒豚」をふるさと納税返礼品として出せるよう商品化。可能な限り買い取り「金の桜黒豚しゃぶしゃぶ」「金の桜黒豚ロールステーキ」「金の桜黒豚餃子」などに加工して販売している。

サツマイモを与える生徒さん。黒豚の毛艶もツヤツヤだ

食肉となる黒豚を育てブランドを立ち上げた金の卵たち その経験と想いはきっと畜産業の未来を照らすに違いない

「黒豚プロジェクト」の経験により、生徒たちは自ら率先して作業に取り組むようになり、表情も明るくなったという。さらに、たくさんの大人たちと出会い、意見交換することで、学び、経験を積み、成長していった。これまでの活動で得た大きな自信は次なる金の卵たちへと受け継がれ「ESSEふるさとグランプリ2023」金賞受賞という功績につながった。高校生が丹精込めて育てる「金の桜黒豚」。これからも続く金の卵たちの物語は、きっと畜産業の未来も明るく照らしていくだろう。